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ロシアにおける毛皮産業

ロシアは、毛皮を求めて東方へ進出していった結果、北アメリカの一部を植民地化するまでになる(西村 2003)。第一次世界大戦が起きると、兵士の防寒服の需要が大きくなり、さらに、新戦力である「航空機」が登場したことで、飛行士の防寒毛皮の需要が大きくなった。軍用毛皮の需要によって莫大な利益を上げることになった(田口 2003)。

ソ連体制下になると、牧畜やトナカイ(Rangifer tarandus)放牧をしていた先住民族の生業がソフホーズ(国営農業)化された。毛皮獣狩猟も地域のソフホーズを支える産業として発展することになる(佐々木 1998)。

第二次世界戦後に、毛皮に代わる化学繊維が登場するまで、ロシア国内の毛皮産業は拡大し続けた。


化学繊維の登場によって、毛皮の需要は大きく落ち込んだがファッションアイテムとして厳然として需要がある。しかし、自然保護団体による毛皮動物保護運動の影響で、ファッション毛皮の需要の世界的規模で減少している。しかし、ロシア国内の需要だけでも大きなものがある。

狩猟は毛皮の獲得のみが動因となっているわけではない。食肉の獲得も狩猟の重要な目的の一つである。貴族たちは、領地に専用の猟場を設けた。嗜みとして行う狩猟で仕留めた鹿や兎(Lepus timidus)、野鳥などは、饗応の際に調理させ振舞った。ロシアの食文化では、生活圏内で獲得する魚や鳥獣肉を材料としている料理が豊富である(沼野他、2006)。今日でも鹿やイノシシは好んで捕獲され、調理される。

参考文献
田口洋美(2003)「北方狩猟文化研究の課題」Arctic Circle 46: 4-9.
沼野充義、沼野恭子(2006)「世界の食文化19ロシア」pp.85-88、農山漁村文化協会
佐々木史郎(1998)「ポスト・ソ連時代におけるシベリア先住民の狩猟 (< 特集>シベリア研究の課題と現在)」民族學研究 63(1):3-18.
西村三郎(2003)「西と東の出会い」『毛皮と人間の歴史』pp.250-299,紀伊国屋書店